祝福のメッセージ:2000ー12

No,200012

もう一人の博士


 これは、聖書の教えにそって書かれた物語の要約です。
 (要約文責:レックス・ハンバード世界宣教団)

 イエスが、ヘロデ王の時代に、ユダヤのベツレヘムでお生まれになったとき、見よ、東方の博士たちがエルサレムにやって来て、こう言った。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおいでになりますか。私たちは、東のほうでその方の星を見たので、拝みにまいりました。」(マタイ2章1、2節)

 実は、博士はもう一人来るはずでした。ところが贈り物にする珍しい真珠を用意するのに手間取ったので、後から追いつくことになっていました。しかし、道を急いでいると、一人の旅人が倒れているのを見つけたので、宿屋まで連れて行き、宿屋の主人に大切な真珠を1つ渡して、面倒を見てくれるようにと頼みました。

 そうこうしているうちに遅くなってしまい、目印にしていた星ももう見えなくなってしまいました。途方にくれて、ある町のはずれでラクダを休めていると、一人のお母さんが赤ちゃんを抱きかかえて走ってきました。

 「助けてください。この子を殺さないで!」

 追ってきた兵士が言いました。「2才以下の子供はみな殺せという命令なんだ。」

 博士はお母さんを自分のラクダの後ろに隠し、隊長らしい兵士の前に二つ目の真珠を見せて言いました。「ここにはもう誰もいない。それより、これを持って早く他を探した方が良くないかい?」

 隊長はその真珠を奪うように受け取り懐に入れると、兵士たちを連れて行ってしまいました。

 たった1つだけ残った高価な真珠を持って、博士はユダヤ人の王としてお生まれになった救い主をたずねて旅を続けました。しかし、うわさを耳にするだけで、なかなかお会いすることができませんでした。

 そのうちにだんだんと年をとって、これ以上旅を続けるのが難しくなってきました。何しろ家を出てから33年以上も経っているのです。そこで、最後にもう一度エルサレムに行って、そこでこの旅を終わることにしました。

 エルサレムに入ると、何やら大勢の人々が集まっていて、騒がしい感じでした。近くにいた人に何事が始まるのかを尋ねると「何でも、ユダヤ人の王といわれる方が十字架にはりつけにされるそうだ。」と言う答えが返ってきました。

 なんということでしょう。33年も探し続けた方にやっとお会い出来るというのに、十字架にかけられるところだなんて。

 すると突然、一人の女の子が走ってきて、「おじさん助けて。」と言ってすがりました。追いかけてきたのはお金持ちの用心棒で、とても強そうな男でした。

 「こいつは奴隷なんだ。ご主人様の家を逃げ出してくるなんて、とんでもない奴だ。痛い目にあわせてやる。」

 博士は、最後の真珠を取り出して、男に見せました。「これで、この子を私に譲ってくれ。」

 「旦那、こんな小さな子供に、こんないい物を出していいんですかい?これなら、ご主人様もきっと大喜びだろうよ。」

 最後の真珠を受け取って男が去って行くと、昼間だというのにあたりが暗くなり、始めました。そして、突然大地震が起こり、まわりの建物が壊れ、博士も地面に倒されました。女の子に起こされて顔を上げ、遠くの丘に目をやると、そこには十字架が3本立っているのが見えました。



 疲れきった博士は、また目を閉じました。女の子が起こそうとすると、博士はこう言いました。

 『主よ。いつ、私は、あなたが空腹なのを見て、食べる物を差し上げ、渇いておられるのを見て、飲ませてあげましたか。
 いつ、あなたが旅をしておられるときに、泊まらせてあげ、裸なのを見て、着る物を差し上げましたか。

 また、いつ、私は、あなたのご病気やあなたが牢におられるのを見て、おたずねしましたか。

 その上、あなた様に差し上げるはずだった真珠は、1つも残っていません。』

 博士の耳元で、主のやさしい声がささやきました。

 『よくやった。良い忠実なしもべだ。まことに、あなたに告げます。あなたが、これらのわたしの兄弟たち、しかも最も小さい者たちのひとりにしたのは、わたしにしたのです。さあ、世の初めから、あなたのために備えられた御国を継ぎなさい。』

 そこには小さな女の子がひとり立っているだけでした。しかし、博士はうれしそうに目を閉じたまま、平安のうちに永い旅を終わりました。