祝福のメッセージ:2003ー09

No. 200309 

目には目を、歯には歯を

 

 旧約聖書にある律法の教えを、イエスがその本来の意味を説いておられる記事が新約聖書の中でたくさん見られます。というのは、当時のユダヤ人たちは律法を自分たちの勝手な解釈で間違った適用をしていたからです。

 その一つに、「目には目を、歯には歯を」という言葉があります。

 今日においても聖書のこのことばを間違って理解し、神が復讐を奨励しているかのように考えている人が大勢います。

 パレスチナの地では、とどまることのない報復のし合いがむなしく続けられ、多くの人がその犠牲になっています。そして、双方がこの言葉を引用して自分たちの行ないの正当さを主張しているのです。それを見ている人々もそれが聖書の教えだと信じ込んでいます。

 聖書は、はたして本当に復讐や報復を許したり、奨励したりしているのでしょうか。


旧約聖書の律法に書かれているこの掟の本来の目的

 このことばは、出エジプト記21章24節、レビ記24章20節、そして申命記19章21節と3回くりかえして書かれています。

 人が争っていて、みごもった女に突き当たり、流産させるが、殺傷事故がない場合、彼はその女の夫が負わせるだけの罰金を必ず払わなければならない。その支払いは裁定による。しかし、殺傷事故があれば、いのちにはいのちを与えなければならない。目には目。歯には歯。手には手。足には足。やけどにはやけど。傷には傷。打ち傷には打ち傷。(出エジプト記21章22-24節)

 これは、人が争いを起こして相手に害を与えてしまったときの償いの方法を教えているのであって、どのように読んでも復讐を教えているのではありません。しかし、この律法では、争いによって人を傷つけることに対しては、たとえ過失であったとしても、大変厳しい償いが求められていて、イスラエルの人々の日頃からの行ないを厳しく戒めています。


自分のやった行為ではなく、その結果に対して責任を問われる

 例えば、ある人が屋根の上から石を落としたとします。大変危険ですが、誰も怪我をせず、何も壊れなかったとしたら、それは危険な行為として咎められるだけですみますが、たまたま誰かが通りかかって怪我をしたら、その責任は重くなります。不幸にして当たり所が悪く、その人が亡くなりでもしたら大変です。重大な責任を問われることになります。しかし、もし何事もなければ厳重注意ぐらいですむかも知れません。
 どの場合もやったことは同じ「うっかり石を落とした」という行為ですから、罰は同じでも良いのではないかという主張もあるかもしれません。しかし、旧約聖書では、起こった結果に応じた責任を問われると教えているのです。この考え方が今の法律にも適用されています。あくまでも被害者への償いの規定です。

 ですから、この教えをもとにして復讐を正当化することは大変間違った解釈であって、聖書の教えから外れたものです。


このことばに対するイエスの教え

 イエスもこのことばを引用していますが、視点が全く違います。
 『目には目で、歯には歯で。』と言われたのを、あなたがたは聞いています。しかし、わたしはあなたがたに言います。悪い者に手向かってはいけません。あなたの右の頬を打つような者には、左の頬も向けなさい。(マタイ5章38、39節)


復讐をしてはいけない

 イエスはもっと積極的に、復讐をしてはいけない、と教えているのです。

 イエスのことばから、当時のユダヤ人たちが、すでに旧約聖書の律法を復讐を正当化する裏づけとして使っていたことがうかがえます。ですから、イエスは復讐を否定し、復讐しないだけではなく、片方の頬を打たれたら、もう一方の頬も向けてあげなさいと言って、争いを避けることを教えているのです。

 もともと旧約聖書の律法も、争ったときの償いを厳しいものにして、始めから争いを避けることを教えているのです。決して復讐を教えてはいません。

 復讐は復讐を生み、敵討ちはまた敵を作ります。大切なことは自分の手で復讐しないで、神の手に全てをゆだねることです。

 私たちはしばしば自分中心的になり、正しい判断が出来なくなります。特に対立している相手に対しては公平な目を失ってしまいます。もし、どうしても復讐が必要だと思うなら、神にそれを任せるべきです。神がなさるときには決して間違えることもなく偏ることもないからです。

 愛する者たちよ。自分で復讐をしないで、むしろ、神の怒りに任せなさい。なぜなら、「主が言われる。復讐はわたしのすることである。わたし自身が報復する」と書いてあるからである。(ローマ12章19節、箴言20章22節参照)

 そうすれば、復讐心の苦々しい気持ちをいつまでも引きずって、暗い人生を生きることなく、赦し合い忍び合って、互いに平和を満喫することが出来るのです。