祈りの家族への手紙:2004-08


 親愛なる祈りの家族のみなさん。

 今年の夏も終りに近づいて来ました。人々は夏の最後を楽しもうと各地に出かけています。大勢の人が行くところに引かれて行きます。ですから、有名な海や山は人、人、人でいっぱいになり、道路も渋滞し、それだけ事故が起こりやすくなります。それでも、人々は集まって楽しい時を過ごします。

 人は一人では生きていけません。今の若者たちはいつも誰かと一緒にいないと不安になり、自分のしていることに確信を持てなくなるそうです。他の人が何をしているのかも気になります。人々は集まって協力し、社会を作って役割を分担することによって大きな力を発揮しています。けれども、人々が悩んでいることの中で一番多いのは人間関係の問題です。人は一人では生きていけないにもかかわらず、人とうまくやっていけないのです。家庭でも職場でも学校でも人間関係に悩む人が多いのです。

 人が集まる最小の単位は家庭です。家庭は人間関係の大切な土台であって、正しい関係を身につけるのに最も良いところです。互いに助け合い、協力し合い、思いやりを持って接することができるからです。けれども、わがままになったり、感謝を忘れて、献身的な奉仕を当然のことのように思ってしまうことがあります。そうしていると、家庭の中でさえ、関係が損なわれたり、険悪になったりします。不本意にも相手の心を傷つけたり、自分自身も傷ついたりすることもあります。

 他人との関係になるともっと難しいことでしょう。さらに難しいのは、文化も習慣も言葉も違う国と国との間です。地球上にはいまだに戦争や争いが絶えず、完全な平和はもたらされてはいません。人と人との関係、民族と民族との関係、国と国との関係をいつもうまく保つ秘訣はないのでしょうか。どうしたら人を信用して安心して住める国や世界をつくることができるのでしょう。

 聖書は、罪の赦し、滅びからの救い、永遠の命という大きなテーマに沿って私たちを導きつつ、人間関係を素晴らしく育てる秘訣を教えています。イエスは「平和をつくる者は幸い」と言われました。

 平和をつくる者は幸いです。その人は神の子どもと呼ばれるからです。
 (マタイ5章9節

 イエスは「平和をつくるのは大変です」とは言われませんでした。ですから、希望が見えています。誰にでもできるのです。しかも、平和をつくることは幸いであり、素晴らしいことです。それをする人は神の子と呼ばれる大きな報いを受けるのです。家庭でも、職場でも、学校でも、あなたは密かに尊敬と注目を集める者となることでしょう。イエスの言われる「神の子」とはそういう人です。

 イエスを愛するなら、イエスが願っておられるように平和をつくる者になろうではありませんか。その秘訣は何度も繰り返されていて明らかです。愛することと赦すことを学んで身につけることです。

 平和をつくる者となるために、聖書が教えている次のことがその助けになります。あなたの身近なところからそれを始めてください。

 関係を修復するためにはなるべく早めに、自分の方から先に働きかける。

 関係を悪化させるのは、自分は正しいと思っているからです。平和をつくる者は相手の出方を待たないで自分が先に歩み寄るのです。本当の愛は相手を尊重することであって、相手を自分の思い通りにすることではありません。ほとんどの対立は両方とも自分が正しいと思っているために起こります。そのことが自分が先に譲歩することを難しくしているのです。しかし、人間関系は何よりも大切で尊いものです。それを台無しにしてまで主張するほどの大切なものはめったにありません。「自分が先に歩み寄る」という難しいことに勇気を奮って挑戦してください。イエスは何一つ罪がなかったにもかかわらず、私たちのために十字架を負って罰を受けてくださいました。

 兄弟愛をもって心から互いに愛し合い、尊敬をもって互いに人を自分よりまさっていると思いなさい。(ローマ12章10節)

 相手を敬い、仕えるものとなる。

 人と人との対立関係はちょうど狭い道で車が出会ったときのようです。狭い道で車が出会うと、どちらも相手が譲るべきだと思います。するといつまでも通り抜けることが出来ません。そういう時には自分の方が進んで譲ることに初めから決めておけば迷うことがありません。あなたは初めから決めておいた自分の思い通りのことを実行できて、それで相手の心も和らぐのです。イエスの弟子の一人に敬意を払って道を譲ったと思えばもっとうれしくなります。

 自分は譲歩して歩み寄っているのに相手は何も感じてくれない、と言う苦情を良く聞きます。

 赦して受け入れることは自分の立場を有利にするテクニックではありません。良い関係を育てるためです。その努力が実るのはもっと後です。しかし、すぐに得られる喜びもあります。ちょうど植物を植えて実がなるのを待つ時のように期待をするのです。初めから性急に実だけを求めていると見落としてしまいます。柔らかい芽が出て、美しい葉が繁ります。人間関係を育てることもそれとよく似ています。生涯に残る良い関係かどうかは後になって振返ったとき分かる事です。主の助けによって、そこに到るまでの過程を大切にして育てることに大きな意義があるのです。

 そのためには、これを実行に移す原動力が必要です。自分にはそれだけの力や勇気があるだろうかと不安になることがありますか。良いことと分かっていてもそれを実行に移す原動力がなかったら前に進めません。その力はどこから来るのでしょう。それは上から与えられるのです。神と自分との縦の関係を正しく保つことによってあふれるばかりの神の愛が私たちの心に流れ込んでくるからです。

 人と人との横の関係を正しく築きそれを育て実を稔らせる秘訣は、神との縦の関係を正しく保つことです。そのことは神の一方的な愛の現れであるイエス・キリストの十字架に象徴されています。

 あなたがたに新しい戒めを与えましょう。あなたがたは互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、そのように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。
 (ヨハネ13章34節)

 イエスが私たちの手本です。あなたは愛されています。

レックス・ハンバード世界宣教団 

日本主事 桜井 剛