祝福のメッセージ
No.201406
クリスチャンになった息子と無神論者の父との往復書簡
6.なぜ神を信じる必要があるのか
息子へ、
色々と多用で返事がおくれてしまったけれど、返事が遅れたもう一つの理由は、この前の手紙があまりにも難しくて、理解するのに時間がかかったからだよ。
言っていることは何とか理解は出来るが、その説明は全て、キリストを信じている者の間だけで通用している理屈のように思われてならない。だから、質問には答えてもらっても心に響いてこないのだ。むしろ、そういう議論の中には入れないような気がして、更にほかの疑問が湧いてきてしまうのだ。
もしかしたら、万物の創造者と呼ばれるような偉大な存在があるかもしれないが、いまだに私に納得できるような、はっきりとした証拠を見せてもらったことがない。だからそう簡単に信じるわけにはいかないのだ。まして、それが神でなければならない理由が分からない。
だから、今回はこういう質問をすることにした。目に見えず、触ることも出来ず、存在する確かな証拠を示すことが出来ないものをなぜ信じる必要があるのか。
信仰というものに何の心の備えも関心も持っていない私にどう答えるのか聞かせてもらいたい。分かりやすい答えを待っている。
愛をこめて、
父より
6.なぜ神を信じる必要があるのか、という疑問に答えて
親愛なるお父さん。
子どもたちは元気に育っています。先日はマラソン大会に参加して上位に入賞したと言って喜んでいました。近々ぜひ会いに来てください。
さて、私たちの討論もいよいよ神学的な中心課題に入って来たような気がします。
一体なぜ神を信じる必要があるのか、という質問は、人間の歴史が始まって以来続いて来た大変重要な課題です。ですから、多くの人が様々な方法でその答えを導こうとしてきました。けれども、数学の公式のように簡単に答えを出すことができるのもではありません。神は存在するのか、なぜ神を信じる必要があるのか。
その議論の中のあるものは知的な理由からであり、あるものは心に関する理由です。哲学的、論理的な理由もありますが、多くの場合は心情的な理由から論じられています。けれどもそれをひとまとめにしてお話しすることが出来ると思います。
それは人類学的議論と呼ばれています。なぜなら、この課題は人格を持った神と、人格を持った人間との間の課題だからです。
私はそれを出来るだけ専門的な用語を使わないで要約したいと思います。
お父さんはこれまでの文通を通して論理的な考え方に優れていることが分かってきましたので、人類学的議論で説明することが分かりやすいのではないかと思ったのです。
私たち人間は人格を持った生き物です。つまり、考える力があり、それによって自分とはいったいどういう存在なのか、この世界はどのような仕組みになっているのかということを理屈で考えることが出来ます。一方、心を持っていて、自由意志があり、愛があり、正義や道徳的な価値を総合的に判断する力があります。そして、魂または意識と呼ばれるものを持っています。それによって物事の本質的な意味や絶対的な価値を判断します。良心、理性、愛、道徳、意義と言ったものが人間の人格を形成する基本的な要素になっています。
ところが、問題は、私たちが住んでいる世界が私たちの持っている人格的な要素にしっかりと対応しているかどうかという点です。対応していないと、私たちの要求はいつも満たされないままになってしまいます。たとえば、お腹がすいたとき食べ物が手に入れば満たされます。渇いたとき水があれば満たされます。その他の基本的な必要に対してそれを満たしてくれる環境になっているなら、その世界は私たちに適合した世界だと言えます。
けれども、人間の品性はそんなに単純な物質的な要素だけで成り立っているわけではありません。裏切られることのない愛、完全な信頼、究極的な安心、絶対的な正義、そして、人生の意義と言ったものを満たしてくれるものが必要です。そのような必要は何によって満たされるのでしょう。人間をそのような性質に造られた方のみがそれを満たすことが出来るのです。私たちが美しいものを見て美しいと感じるのは、神が美しいものを造られたと同時に、美しいと感じる心をもお造りになったからです。
それがなかったら、この世界はただ単に数々の物質が飛び交い、ぶつかり合い、変化して過ぎ去っていくだけの空しいものになってしまいます。
美しいものを美しいと感じ、良いものを良いと感じ、愛すること、愛されることを素晴らしいと感じる心を正しく持つためには、それらをお造りになると同時に、私たちにそれを正しく受け止める心をお与えになった方を信じ、その方をより深く知ることが大切です。そうしないと、人間の最も深いところにある、人生の意義と永遠を思う心を満たす事が出来ないからです。
いつものように、お父さんの率直なご意見を聞かせてください。
私の大きな愛をこめて、
息子のグレッグより