親愛なる祈りの家族の皆様。
いまだに人種差別がなくならないアメリカで、最近立て続けに悲しい事件が起こりました。
警察官の過剰な対応によって市民が射殺される事件や、人種差別主義者が黒人教会に侵入して銃を乱射して、聖書研究会に集まっていた9人の方が亡くなるという事件がありました。犠牲者の中には上院議員や、牧師も含まれていました。
このような事件に対して抗議デモから暴動になったり、復讐を叫んだりする姿をよくテレビで見ます。けれども、チャールストンの教会で起きた事件はそれとは全く違っていて、アメリカ社会に大きな波紋を起こしました。
アメリカのNBCテレビがそれについて取材し、詳しく報道すると人々は深く感動したのです。
被害者の一人で、その教会の名誉牧師でもあったダニエル・シモンズ博士の家族は、記者の取材に対してこのように言っていました。
「失ったものはとても大きなものです。けれども、被害者は私たちだけではありません。他の被害者の家族のひとりが犯人に対して、赦しの言葉をかけていたのを聞いた時、この地域の人々の愛を強く感じて大きな慰めを受けました。私たち被害者の家族が持っている愛は、人を赦すことの出来るキリストの愛です。それは、加害者に対しても向けることの出来る愛です。」
「今は人種差別や政治について話したいとは思いません。むしろ、地域の人々が早く立ち直って前に進むことが出来るように願っています。」
「年令も性別も人種も超えた多くの方々が、心を一つにして私たちを慰めるために集まってくださいました。加害者を非難するためではありませんでした。生かされていることを喜び合うためでした。」
「憎むことには決して勝利はありません。赦すことによって、加害者も被害者も本当の癒しを受けるのです。ここにいる全ての人が、加害者を含めて、本来の正しい生き方をするチャンスをもう一度与えられるべきです。」
「それが出来るのは神の愛以外にはありません。」
―6月21日、NBCテレビの記事より―
「しかし、わたしはあなたがたに言います。自分の敵を愛し、迫害する者のために祈りなさい。それでこそ、天におられるあなたがたの父の子どもになれるのです。天の父は、悪い人にも良い人にも太陽を上らせ、正しい人にも正しくない人にも雨を降らせてくださるからです。」(マタイ5章44節45節)
敵をも赦すことの出来る愛は、2000年以上も前から、「迫害する者のために祈りなさい。」というイエスの教えを守っていた人たちの間で実践されていたことです。ステパノは自分に石を投げつけて殺そうとしていた人々のために「主よ。この罪を彼らに負わせないでください。」と祈りつつ息を引き取りまました。(使徒の働き7章60節)
「もしあなたがたの互いの間に愛があるなら、それによって、あなたがたがわたしの弟子であることを、すべての人が認めるのです。」(ヨハネ13章35節)
赦すことは決して消極的でやさしい行ないではありません。赦すことが出きる人は霊的な強さを持った人であり、人格的に成長し、自制心を豊かに持った、思慮深い人です。
赦しは、本来人間が持っている自己中心的な復讐心からは決して出てこないことばです。自分の努力や決断だけによって実践できるものではありません。聖霊の助けによって神の御心に照らし合わせて初めて出来る行ないです。信仰的な強い決意によってのみ実践できるものです。
被害者の孫娘にあたるアランさんが言っているように、憎むことには決して勝利はありません。赦すことによって、加害者も被害者も本当の癒しを受けることができるのです。
NBCテレビによるこの報道によって、サウスカロライナ州の主都庁舎に53年の間掲げられていたアメリカ南部連邦主義を象徴する旗が6月17日をもって下ろされることになりました。
「この旗が白人優位主義を容認する思想を助長していたので、今回のような事件の要因の一つになったのではないか。」と心配する人が大勢いたからです。日本人の私たちが理解するのは難しいことですが、この旗は古き良きアメリカ精神を象徴する大切なものだったのです。それにもかかわらず、人々の心の中には「憎んだり差別をしたりしてはいけない」という思いが改めて強く印象付けられたのです。赦しがたいことを赦すことは大きな力になってこれからも多くの人々の心を動かし続けることでしょう。
もしあなたが赦せないという気持ちを持っておられたら、それがどんなに小さなことであっても、赦すことの出来る力と、そこから来る心の平安をイエス・キリストに求めてお祈りください。主はきっとあなたの心にも喜びと平安を与えてくださいます。主は私たちへの賜物としてそれを与えたいと願っておられるからです。
平安と喜びは、神が私たちに与えようとしておられる賜物です。しかも、その良い品性は神が私たちと共有したいと願っておられる数々の素晴らしい賜物の中のほんの一部分にすぎません。神はもっともっと多くの良い賜物を私たちのために用意しておられます。神はご自分に似た品性をたくさん私たちと共有したいと願っておられるのです。
お互いに親切にし、心の優しい人となり、神がキリストにおいてあなたがたを赦してくださったように、互いに赦し合いなさい。(エペソ人への手紙4章34節)
人を赦し、その人を愛して受け入れることは、赦される人のためではなく、赦す人のためです。それによって、その人はもっと大きな賜物を神から受け取ることになるからです。
あなたは愛されています。
レックス・ハンバード祈りの家族
桜井 剛