No.201605
イエスの祈り
主よ。私たちに祈りを教えてください。
さて、イエスはある所で祈っておられた。その祈りが終わると、弟子のひとりが、イエスに言った。「主よ。ヨハネが弟子たちに教えたように、私たちにも祈りを教えてください。」(ルカの福音書11章1節)
クリスチャンにとって祈りはとても大切です。祈ることはクリスチャンには他にはない特別な意味があるからです。なぜなら、私たちが信じているイエス・キリストは神のもとから来られた神ご自身であるのに、そのイエスが祈られたのです。
祈りは人間なら誰にでもできるごく自然の行ないです。
誰でも、困難に直面したとき、窮地に立たされたとき、大きな悲しみを経験したとき、力尽きたとき、自然に祈りに導かれます。けれども、どう祈るかはそれぞれ違っています。
私は長いクリスチャン生活の中で祈りの大切さを学びました。それだけではなく、多くの人に祈りについて教えることさえして来ました。けれども、今もなお、自分自身も祈りについてもっと学ぶ必要があることを感じています。弟子たちと同じように、「主よ。祈りを教えてください。」と叫びたくなるのです。
本当の祈りは、願い事だけを並べ立てることではありません。けれども多くの人が、真剣に信じているわけでもない偶像に向かって、たくさんの願いごとをするのです。
正しい祈りは、型にはまった儀式的な決まり文句を唱えることでもありません。生きておられる全能の神なら、私たちがどのような願い方をしても、全て理解してくださいます。感情を込めて大声で叫べばいいというわけでもありません。黙って静かに時間を過ごすだけとも違います。それらはしばしば、人間の精神的な活動のために有益だと言われています。確かにそのような効用があることは医学的にも認められている事実です。けれども、本当の祈りはそのような効果を追求するためのものではありません。
では本当の祈りとはどのような祈りでしょう。私たちはそれをイエスから学ぼうとしているのです。
イエスの弟子たちはいつもイエスと一緒にいて多くのことをイエスから学びました。
イエスが力あるわざの数々を行なわれるのを見ていました。病人が癒やされるのを何度も直接目撃しました。
長年人を苦しめていた悪霊が追い出されて、その人が解放され正常な人格を取り戻すのを見て驚嘆しました。
吹き荒れる嵐をただの一言で静めたことも知っています。それだけではありません。水の上を歩かれたことも、わずかのパンと魚でお腹を空かした大勢の人々を養われるのも見ました。実際その場にいた弟子たちが残りのパンをたくさんのかごに集めました。
けれども、イエスと共に生活していた彼らが一番多く見て、経験したことは、イエスが、しばしば静かなところに退いて祈られたことです。
群衆を帰したあとで、祈るために、ひとりで山に登られた。
(マタイ6章6節、14章23節)
イエスは祈るために山に行き、神に祈りながら夜を明かされた。
(ルカ6章12節)
ペテロとヨハネとヤコブとを連れて、祈るために、山に登られた。
(ルカ9章28節)
ゲツセマネという所に来て、イエスは弟子たちに言われた。「わたしが祈る間、ここにすわっていなさい。」(マルコ14章32節)
祈りはイエスにも大切なことだったのです。そのこと自体が祈りの深い意味を私たちに教えています。
祈りは神との交わりを持つことです。
祈りはイエスご自身の本質であり、イエスに習う私たちにとっても、私たちの信仰の中心となるものです。弟子たちの目にもイエスの祈りは特別でした。イエスのように祈る人を見たことがなかったからです。
何度となくイエスが祈る姿を目撃した弟子たちが、「主よ。私たちに祈りを教えてください。」と嘆願したことによっても、イエスの祈りがいかに大きな意味を持つものだったかがうかがわれます。
私たちも、弟子たちと同様に、「主よ。私たちにも祈りを教えてください。」と懇願したくなります。
私たちが心を静めて祈ることをイエスも願っておられるに違いありません。
私たちが心から願うなら、イエスは私たちをそばに引き寄せて、ご自分が祈ったのと同じように、また、弟子たちに教えられたように、私たちにも祈りを教えてくださるに違いありません。
ですから、先ず、イエスに向かって心から、「主よ。私にも祈りを教えてください。」と祈ることから始めようではありませんか。
祈り
「主よ。私にも祈りを教えてください。あなたは父なる神と親しく交わり、心を一つにしておられました。あなたの祈りのように、神との深い交わりを持つことのできる祈りを教えてください。
全能の神とともにおられ、どんな時にも平静を保ち、苦しんでいる人には心から寄り添い、力いっぱい助けることのできるあなたに、少しでも似た者となれますよう、あなたの祈りを教えてください。
いつも平安の中で神の御心に従いきることのできる強い心が持てますよう、あなたの祈りを私にも教えてください。アーメン。」