祈りの家族への手紙:2022-09

2022年9月 

 親愛なる祈りの家族の皆様

 ハンバード牧師がテレビを使って伝道を始めたのは、1950年の中ごろからでした。その頃はまだ、テレビ放映はアメリカでも始まったばかりで、現在のようにビデオテープもネットワークもなかったので、一局ずつの放映でした。

 間もなくテレビの技術が進んだので、ハンバード牧師の伝道番組はアメリカ中で500局以上のテレビ局から放映されるようになりました。

 「全世界に出て行ってイエス・キリストの福音を伝えなさい」というみことばを与えられていたハンバード牧師は、テレビを使ってイエス・キリストの福音を世界中に伝えることを自分の使命として受け取り、アメリカ合衆国全土に、そしてカナダ、オーストラリア、フィリッピンなどの英語圏でテレビ伝道の番組を放映するようになりました。

 日本では、アメリカで放映していた英語の番組をそのまま、主だったホテルや外国大使館などに有線テレビ放送網を使って放映を始めました。しかし、それは一般の日本の人々に届くことはありませんでした。

 ハンバード牧師はその福音番組を出来るだけ多くの国の人々に、その国の言葉で放映することを切に願っていました。日本でも、ホテルや大使館だけでなく、多くの日本人に日本語で福音を伝えたかったのです。

 その頃の私はまだアメリカで留学中でしたが、ハンバード牧師がオハイオ州のアクロンにあった明日への教会という名前のテレビスタジオと宣教団本部のある教会に招待してくださり「日本に行って、日本語による放映を手伝ってほしい」と言われました。私はハンバード牧師の大きなビジョンに心を打たれて、その大任を引き受ける決心をしました。今から50年近くも前のことです。

 こうして日本語の放映が始まったものの、それは地方の限られた局からの放映で多くの人に見られていたわけではありませんでした。主だったテレビ局に切り替えることが出来れば、関東と関西の全域で見ることが出来るようになります。私たちはそのために祈りました。それが、大きな奇跡によって実現したのです。

 当時全国放映のできるテレビ局は「政治政党と宗教にかたよった放映はしない」という協定を結んでいました。ですから、キリスト教のテレビ番組を放映することはありえないことでした。ところが、開局して間もなかったあるテレビ局は、アメリカの番組を毎週放映できれば経済的に大きな助けになることを知っていました。

 新しい番組の放映を始めるには、内容を審査してもらうために、番組のサンプルとなるテープを届けることになっていました。その時のサンプルテープとして使われたのが、歌手のジョニー・キャッシュがゲストとして出演しているものでした。

 ジョニー・キャッシュは日本でも有名で、ファンもたくさんいました。彼の歌うカントリー・ミュージックは開拓時代のアメリカで、信仰深い人々に愛されてきた音楽です。ジョニー・キャッシュが心を込めて数曲を歌った後で、ハンバード牧師は古くから古典として世界的に受け入れられている聖書について話をしました。

 ちょうどそのテレビ局の番組審査会の長だった方が、カントリー・ミュージックの大ファンでした。番組審査会は「この番組は音楽と教養の番組である」という結論にいたりました。こうして放映が許可されたのです。まさに奇跡でした。

 ハンバード牧師のテレビ番組を通して多くの人々にイエス・キリストの福音が、楽しく分りやすい形で届くようになりました。毎週多くの反響があり、テレビの前でハンバード牧師と共に祈り、信仰を受け入れる人々が与えられました。

 テレビ伝道の経済的な負担は莫大なものでしたが、アメリカからのサポートだけでなく、多くの日本の皆さんのご支援によりこの番組が続けられたのはもう一つの奇跡でした。その10年間は主から与えられた特別な恵の期間だったと思います。

 アメリカ本部の事情や日本のテレビ局の事情により「明日への希望」の放映は終了しましたが、これは新しい形の福音宣教の始まりとなりました。

 私たちは「レックス・ハンバード祈りの家族」として心を繫ぎ、共にみことばを学び、神の子どもとしての成長を目指すことになりました。このようして既に40年近い月日が過ぎました。その間、ずっと私と共に歩んでくださった皆さんには心から感謝しています。

 皆さんも、この年月の間に色々な祝福を経験なさったことでしょう。その全てに感謝し、さらに「信仰の導き手、また完成者」であられる主イエスに目を向けて進んでください。

 私は今年の9月2日で83歳になりました。福音宣教の働きを、若い世代の人々に任せるべき時が来たことを実感しています。

 毎月の手紙を準備することも、だんだんおぼつかなくなってきましたので、主はそろそろ私の引退を許可してくださるのではないかと思うのです。しかし、多くの方々のお便りを拝見していると「これは私ではない、全ては主がなさっておられることだ」ということをあらためて知らされて涙が溢れます。こんな私でもまだお役に立つことがあるのなら、という思いも湧いてきます。

 主がお許しくださるのなら、もうしばらくは力いっぱい皆さんと信仰を励まし合っていきたいと思うのですが、もし突然私からの手紙が届かなくなっても、どうか心配しないでください。皆さんの励ましと祈りのおかげで、私は感謝に溢れつつ、愛する主イエス・キリストのもとに帰っていこうとしているのですから、これ以上望むことは何もありません。

 「恐れるな。わたしがあなたとともにいるからだ。」(イザヤ書43章5節)と主が言ってくださっているように感じています。

 私たちは確かに愛されているのです。

レックス・ハンバード祈りの家族 

桜井 剛