祝福のメッセージ

No.202010　
たとえによる教えIV　

迷い出た羊のたとえ話

　さて、取税人たちや罪人たちがみな、話を聞こうとしてイエスの近くにやって来た。すると、パリサイ人たち、律法学者たちが、「この人は罪人たちを受け入れて、一緒に食事をしている」と文句を言った。そこでイエスは、彼らにこのようなたとえを話された。

　「あなたがたのうちのだれかが羊を百匹持っていて、そのうちの一匹をなくしたら、その人は九十九匹を野に残して、いなくなった一匹を見つけるまで捜し歩かないでしょうか。見つけたら、喜んで羊を肩に担ぎ、家に戻って、友だちや近所の人たちを呼び集め、『一緒に喜んでください。いなくなった羊を見つけましたから』と言うでしょう。

　あなたがたに言います。それと同じように、一人の罪人が悔い改めるなら、悔い改める必要のない九十九人の正しい人のためよりも、大きな喜びが天にあるのです。（ルカの福音書15章１―7節）

　イエスはご自分のもとに来る人は誰であっても、拒んだり退けたりはなさいません。

　取税人や、人々から「罪人」と呼ばれ顔をそむけられていた人々が、イエスをしたって集まってきました。彼らは自らの弱さや罪深さをよく知っており、心は飢え渇いてイエスのみことばを切に求めていたからです。イエスは彼らの悔い砕かれた魂を尊ばれ、彼らと親しく語り合い、時には彼らの家に招かれ食事を共になさいました。

　それは当時の社会的指導者であった律法学者やパリサイ人たちにとって、とんでもないことだったのです。彼らはイエスを罪人の仲間と呼び激しく非難しました。律法学者やパリサイ人は神の律法の本質を見誤り、形ばかりにこだわって自分たちはそのすべてを守っている、自分たちこそ完全に正しい人間だと思って他人をさばいていました。しかし、イエスの目は彼らの偽善を見抜いていました。神は外側ではなく、心をご覧になります。イエスはのけ者にされ、さげすまれていた人々、当時の社会からはみ出した人々を特に心にかけておられました。自分の義を振りかざす人々よりも罪びとと呼ばれるこの人々の方が、実は神の国に近いのです。

　彼は罪人の仲間だという批判にこたえて、イエスはこのたとえ話をなさいました。99匹の羊たちを残して、迷い出た一匹の羊を探しに出かけた羊飼いの話です。

　羊飼いは草の茂った良い場所に羊を導いて行き、そこで十分に食べさせて休ませると、また安全な囲いの中に導いて帰ることが主な仕事でした。けれども、羊の群れを集めて、帰ろうとしたとき、その中の一匹がいなくなっていることに気が付ました。「百匹もいるのだから、一匹ぐらいは仕方がない、よくあることだ」そう思って、早々に帰ることもできたかもしれません。けれども、その羊飼いは、そうしませんでした。その一匹も、彼にとっては大切な羊だったのです。

　「ああ、またあいつか、耳の先がちょっと曲がっていて、何にでも興味を示すいたずらっ子だ。今日こそはもうほうっておこう。オオカミにでも何にでも食われてしまえ」と思ったでしょうか。いいえ、その羊飼いは99匹を安全なところに残しておいて、迷い出た一匹を探しに出かけたのです。苦労の末に見つけると大喜びで、その羊を肩に乗せて帰ってきました。

　神は滅びに向かっている魂の一人一人をそのように気遣っておられます。迷い出た魂を見つけ出し連れ帰るという使命を負ってイエスはこの世に遣わされたのです。

　私たちはみな、羊のようにさまよい、それぞれ自分勝手な道に向かって行った。しかし、主は私たちすべての者の咎を彼に負わせた。イザヤ53章6節

　もし、あなたが孤独や様々な問題に苦しんでおられて、イエスのもとから迷い出たと感じておられたら、イエスがあなたを探し求めて野山を歩きまわっておられる姿を思い出してください。イエスはあなたの魂を探し求め、見つけ出すまではあきらめることをなさいません。

　私はもうだめだ、いなくてもいい存在だ、などと決して思わないでください。神はあなたをお見捨てにはなりません。一人一人を大切に見守ってくださっています。あなたは決して大勢の中の一人ではありません。たった一人の大切な存在なのです。あなたが今どのような状態であり、ご自分のことをどう思っていたとしても、神にとっては、なくてはならない大切な一人です。

　私たちも、イエスの心に習って、家族の中でも、教会でも、弱い人を特別に心にかけて助けましょう。自分は強いと思う人は、一層謙虚になって、他の人たちを理解し、一人一人を神の大切な羊の一人として扱ってください。決して弱い人を軽ろんじてはなりません。本当はあなたも私自身も、神の前には弱い迷いやすい存在なのです。イエスは弱い私たちをいつも心にとめておられます。助けを必要とする人も、自分の弱さを自覚し、謙虚になって、感謝しつつ助けを受け取ってください。そうすれば、イエスが言われたように神の国は私たちのただなかに生まれます。

　神の国はあなたがたのただ中にあるのです。（ルカの福音書17章21節）